自筆証書遺言の方式が緩和されます。
平成30年7月、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立しました。
(施行日はまだ決まっていません。)
改正内容は多岐にわたりますが、ここでは自筆証書遺言の方式の緩和について書きたいと思います。
「自筆証書遺言」とは「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押」した遺言のことを言います(民法第968条)。
つまり、遺言をする人が、全て手書きで、遺言内容、日付を書いて、署名して、印鑑を押印した遺言書のことで、普通の方が「遺言書」と聞いて思い浮かべるのは、この「自筆証書遺言」でしょう。
この自筆証書遺言として認められるための要件について、裁判所はこれまでかなり厳しく考えていました。
例えば、民法は遺言書の「全文」を自書(手書きすること)しなければならないと定めているので、本文を手書きして、本文に添付した財産目録をタイプ印刷した遺言を無効、と裁判所は判断しました(東京高判昭59・3・22)。
今回の民法改正で、相続財産の目録については、自書しなくても、パソコン等で作った目録、通帳コピーや不動産登記簿等、自書していない書類を目録として添付することができるようになります(その場合でも、各ページに署名押印する必要はあります)。
遺言書を作るのは年配の方が多いでしょうし、人によっては財産目録が多数になる場合もあります。
改正前の民法の解釈によれば、財産目録全文を手書きしなければならず、特に年配の方には大きな負担でした。
また、財産目録は形式的な記載だから手書きでなくても良いと思って、パソコン等で目録を作っていた場合もあるでしょう。
この改正や、別のコラムで取り上げた自筆証書の遺言書を法務局で保管する制度の創設により、これまでより、自筆証書の遺言書を作りやすくなりますね。
最後に、この改正はまだ施行されていませんので、施行されるまではこれまで通り、全文を自書した遺言書を作成すべきでしょう。